イーサリアム(ETH)とは

イーサリアム(Ethereum)は、ビットコインに次ぐ時価総額を持つ仮想通貨(暗号資産)であり、単なるデジタル通貨としての機能を超えた、革新的なブロックチェーンプラットフォームです。スマートコントラクト機能を実装した最初の主要プラットフォームとして、分散型アプリケーション(DApps)やNFT(非代替性トークン)、DAO(分散型自律組織)など、幅広い用途に活用されています。
この記事では、イーサリアムの歴史、特徴、他の資産クラスとの違い、将来価格予想、そしておすすめの投資方法について詳しく解説します。
イーサリアムの歴史

誕生のきっかけ
イーサリアムは、2013年に当時わずか19歳だったロシア系カナダ人のプログラマー、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)によって考案されました。ブテリンはビットコインのコミュニティに参加していましたが、ビットコインの機能を拡張したいと考えていました。彼はビットコインが単純な価値移転しかできないことに限界を感じ、より多機能なブロックチェーンプラットフォームの構想を練りましたCoincheck1。
開発の歩み
2013年末、ブテリンはイーサリアムのホワイトペーパー(設計書)を発表しました。このホワイトペーパーでは、ブロックチェーン上でプログラムを実行できる「スマートコントラクト」という革新的なアイデアが提案されていました。
2014年には、スイスのチューリッヒでイーサリアム財団が設立され、同年7月には約1,800万ドル(当時)を集めるクラウドセールが行われました。このプロジェクトには、ジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)やギャビン・ウッド(Gavin Wood)など、後に暗号資産業界で重要な役割を果たす人物が参加していましたMEXC2。
イーサリアムの主要アップデート
イーサリアムは2015年7月30日に正式にローンチされ、その後も継続的に進化を続けています。主な開発マイルストーンには以下のようなものがあります:
- フロンティア(2015年): 最初のリリース版
- ホームステッド(2016年): 安定版のリリース
- メトロポリス(2017年): セキュリティと拡張性の向上
- コンスタンティノープル(2019年): 効率性の改善
- ビーコンチェーン(2020年): イーサリアム2.0への移行の第一段階
- ザ・マージ(2022年9月): プルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への歴史的な移行
- シャンハイアップグレード(2023年): スケーラビリティとセキュリティの向上
- デンクン(2024年): トランザクション効率の改善
特に2022年9月に実施された「ザ・マージ」は、コンセンサスメカニズムをPoWからPoSに移行させるという歴史的な転換点でした。これにより、イーサリアムの消費電力は99.95%削減され、環境に優しいブロックチェーンとなりましたTechnology Review3。
イーサリアムの特徴と仕組み

ブロックチェーン技術
イーサリアムは、ビットコインと同様にブロックチェーン技術を基盤としています。ブロックチェーンとは、取引データをブロックと呼ばれる単位にまとめ、それを時系列で連結させたデータベースです。一度記録された情報は改ざんが極めて困難であり、透明性と信頼性を担保しています。
スマートコントラクト
イーサリアムの最大の特徴は「スマートコントラクト」の実装です。スマートコントラクトとは、あらかじめプログラムされた条件が満たされると自動的に実行される契約のことです。例えば、「AさんがBさんに商品を送ったら、自動的に代金が支払われる」といった取引を、第三者の介入なしに実行できますCoincheck4。
// シンプルなスマートコントラクトの例
contract SimplePayment {
address public sender;
address public receiver;
uint public amount;
constructor(address _receiver) payable {
sender = msg.sender;
receiver = _receiver;
amount = msg.value;
}
function release() public {
require(msg.sender == sender);
payable(receiver).transfer(amount);
}
}
イーサリアム仮想マシン(EVM)
スマートコントラクトを実行するために、イーサリアムはイーサリアム仮想マシン(EVM)と呼ばれる分散型コンピューターを使用しています。これはブロックチェーン上でプログラムを実行するための環境で、Solidityなどの専用プログラミング言語で書かれたスマートコントラクトを動作させます。
ガス(Gas)
イーサリアムネットワーク上でスマートコントラクトを実行したり取引を行ったりするには、「ガス」と呼ばれる手数料が必要です。ガスはイーサ(ETH)で支払われ、ネットワークの計算リソースを使用するための対価となります。複雑な処理ほど多くのガスを消費します。
分散型アプリケーション(DApps)
スマートコントラクトを活用して、イーサリアム上で動作する「分散型アプリケーション(DApps)」が開発されています。これらのアプリケーションは中央管理者がなく、オープンソースで透明性が高いという特徴があります。DeFi(分散型金融)、NFTマーケットプレイス、ゲームなど、様々な分野でDAppsが利用されていますDMMビットコイン5。
イーサリアムのすごいところ

プログラマブルなブロックチェーン
イーサリアムの最大の強みは、ブロックチェーン上でプログラムを実行できる点です。これによって単なる送金だけでなく、複雑な取引や契約の自動化、新たなデジタルサービスの創出が可能になりました。
豊富なエコシステム
イーサリアムは膨大な数の開発者を抱え、活発なコミュニティを形成しています。その結果、DeFi、NFT、DAOなど多様なアプリケーションが構築され、豊かなエコシステムが生まれています。特にDeFiでは、従来の金融機関を介さずに、貸借、取引、保険などのサービスが提供されています。
非代替性トークン(NFT)の基盤
2021年に大きな話題となったNFT(Non-Fungible Token)は、主にイーサリアム上で発行されています。NFTは、デジタルアート、音楽、ゲーム内アイテムなど様々なデジタル資産の所有権を証明するために使用されています。イーサリアムのERC-721やERC-1155といった規格が、NFTの標準として広く採用されていますBitbank6。
継続的な技術革新
イーサリアムは常に技術革新を続けており、スケーラビリティ(処理能力)や効率性の問題を解決するための様々なアップデートが計画されています。イーサリアム2.0への移行や、レイヤー2ソリューションの開発によって、より高速で安価な取引の実現を目指しています。
企業・機関投資家からの注目
イーサリアムは、Microsoft、JP Morgan、Amazonなど大手企業からも注目されており、Enterprise Ethereum Alliance(EEA)というイーサリアムの企業利用を促進する団体も設立されています。また、2024年5月には米国でイーサリアム現物ETFが承認され、機関投資家からの投資も増加していますダイヤモンド7。
他の資産クラスとの違い

ビットコインとの比較
イーサリアムとビットコインは、共にブロックチェーン技術を基盤としていますが、いくつかの重要な違いがあります:
項目 | イーサリアム | ビットコイン |
---|---|---|
主な用途 | スマートコントラクトプラットフォーム | デジタルゴールド、価値の保存・送金 |
発行上限 | なし(年間供給量は調整される) | 2,100万BTC |
ブロック生成時間 | 約15秒 | 約10分 |
コンセンサスアルゴリズム | プルーフ・オブ・ステーク(PoS) | プルーフ・オブ・ワーク(PoW) |
プログラマビリティ | 高い(Turingコンプリート) | 制限あり(非Turingコンプリート) |
特にプログラマビリティの違いは大きく、イーサリアムはあらゆる種類のプログラムを実行できる「チューリング完全」な言語をサポートしているのに対し、ビットコインのスクリプト言語は比較的シンプルな処理しか行えませんビットバンク8。
従来の金融資産との違い
イーサリアムをはじめとする暗号資産は、従来の金融資産(株式、債券、不動産など)と比較して以下のような違いがあります:
- 分散型: 中央管理者が存在せず、世界中のノードによって維持される
- 24時間365日取引可能: 休日や時間外取引の概念がない
- 高いボラティリティ: 価格変動が大きく、短期間で大幅な値動きがある
- 国境を越えた移動: 国際送金が容易で手数料が低い
- 独自のユースケース: スマートコントラクトなど、従来にない機能を持つ
通貨としての役割
イーサリアムの通貨単位である「イーサ(ETH)」は、単なる通貨としてだけでなく、イーサリアムネットワーク上で行われる様々な活動のための「ガス代」としても機能します。これはガソリンが車を動かすのと同じように、ETHがイーサリアムエコシステムを動かす燃料となっていることを意味します。
イーサリアムの価格推移

過去の価格変動
イーサリアムは2015年のローンチ以来、大きな価格変動を経験してきました。以下がその主な推移です:
- 2015年: 約1ドルで取引開始
- 2017年末: 最初の大きなブル市場で約1,400ドルまで上昇
- 2018年: 暗号資産バブル崩壊で約80ドルまで急落
- 2020年: DeFiやNFTのブームで再び上昇傾向に
- 2021年11月: 史上最高値である約4,800ドルを記録
- 2022年: 暗号資産市場全体の下落で1,000ドル付近まで下落
- 2023年: 約1,600〜2,000ドルのレンジで推移
- 2024年3月: 約3,600ドル(約60万円)の高値を記録
特に2021年のNFTブームや、2022年9月のPoSへの移行、2024年前半のETF承認期待などが価格に大きな影響を与えましたCoinDesk Japan9。
現在の市場状況(2025年4月現在)
2025年4月現在、イーサリアムの価格は1ETH=約28万円(約1,800ドル)で推移しています。2024年3月に記録した60万円付近から調整局面に入っていますが、長期的には上昇トレンドが維持されています。イーサリアム現物ETFへの期待や技術アップグレードが市場に影響を与えていますダイヤモンド7。
1・3・5・10年後の価格予想

価格予測の難しさ
暗号資産の価格予測は非常に難しく、多くの不確定要素に左右されます。技術の進化、規制環境、市場心理、マクロ経済情勢など様々な要因が複雑に絡み合うため、以下の予測は参考値として捉えてください。
専門家や機関による予測
様々な専門家や機関による予測をまとめると、以下のようになります:
1年後(2026年)の価格予想
- 楽観的見通し: 5,000〜8,000ドル(約78万〜125万円)
- 中立的見通し: 3,000〜5,000ドル(約47万〜78万円)
- 悲観的見通し: 2,000〜3,000ドル(約31万〜47万円)
スタンダードチャータード銀行は、以前は1万ドルという予測を出していましたが、レイヤー2ソリューションの台頭などを理由に4,000ドル程度に下方修正していますCoinPost10。
3年後(2028年)の価格予想
- 楽観的見通し: 10,000〜15,000ドル(約156万〜234万円)
- 中立的見通し: 5,000〜8,000ドル(約78万〜125万円)
- 悲観的見通し: 3,000〜5,000ドル(約47万〜78万円)
この時期までには、イーサリアム2.0の完全実装や、DAppsエコシステムのさらなる成長が期待されています。
5年後(2030年)の価格予想
- 楽観的見通し: 20,000〜26,000ドル(約312万〜406万円)
- 中立的見通し: 8,000〜15,000ドル(約125万〜234万円)
- 悲観的見通し: 4,000〜6,000ドル(約62万〜94万円)
VanEckの分析によると、イーサリアムの価格は2030年までに22,000ドル(約342万円)に達する可能性があるとされていますA-TM11。
10年後(2035年)の価格予想
10年という長期間の予測はさらに不確実性が高まりますが、イーサリアムがブロックチェーン技術の主要プラットフォームとしての地位を維持できれば、以下のような予測が考えられます:
- 楽観的見通し: 50,000〜100,000ドル(約780万〜1,560万円)
- 中立的見通し: 20,000〜40,000ドル(約312万〜624万円)
- 悲観的見通し: 10,000〜15,000ドル(約156万〜234万円)
これらの予測は、Web3やメタバースなどの新たな技術トレンドにイーサリアムが引き続き中心的な役割を果たすことを前提としていますICOBench12。
価格に影響を与える要因
イーサリアムの価格に影響を与える主な要因は以下の通りです:
- 技術的進化: イーサリアム2.0の実装進捗、スケーラビリティの改善
- 機関投資家の参入: ETFや機関投資家の取り組み
- 競合プロジェクト: Solana、Cardano、Polkadotなどとの競争
- 規制環境: 世界各国の暗号資産に対する規制の動向
- マクロ経済: インフレ、金利、景気サイクルなどの影響
おすすめの投資方法
投資を始める前に
イーサリアムを含む暗号資産は高いボラティリティを持ち、価格変動が大きいため、投資前に以下の点を理解しておくことが重要です:
- リスク許容度を理解する: 投資可能な資金は、失っても生活に支障がない金額に限定する
- 長期的視点を持つ: 短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な価値を見据える
- 分散投資を心がける: 資産全体のうち暗号資産の割合を適切に調整する
イーサリアムの購入方法
1. 取引所での購入手順
- 取引所の選択と口座開設: 大手の暗号資産取引所(Coincheck、bitFlyer、GMOコインなど)で口座を開設します。本人確認書類の提出が必要です。
- 入金: 銀行振込やクレジットカードを使用して、取引所に日本円を入金します。
- イーサリアムの購入: 取引所内で日本円をイーサリアムに換えます。「販売所」と「取引所」の2つの方法があり、一般に取引所の方が手数料が安いです。
- 保管: 購入したイーサリアムは取引所のウォレットで保管するか、より安全なハードウェアウォレットに移すことができます。
2. ステーキングによる運用
イーサリアムはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行したため、保有するETHをステーキングして報酬を得ることができます:
- 取引所を通じたステーキング: Coincheck、GMOコイン、bitbankなどの取引所では、簡単にステーキングサービスを利用できます。年利は3〜5%程度が一般的です。
- プール型ステーキング: 32ETH未満でもステーキングに参加できるRocketPoolやLidoなどのサービスがあります。
- ソロステーキング: 32ETH以上を保有し、技術的知識がある場合は、自分でバリデータノードを運用することも可能です。
ステーキングの利点は、保有しているだけで追加収入が得られる点ですが、一定期間ロックアップされるケースもありますので、流動性の制限に注意が必要ですBitbank13。
3. イーサリアムETFへの投資
2024年5月に米国でイーサリアム現物ETFが承認されたため、証券口座を通じてイーサリアムに投資することも可能になりました:
- 米国ETF: 米国の証券会社を通じて、BlackRock、Fidelity、Grayscaleなどが提供するイーサリアムETFに投資できます。
- 日本の取り扱い: 日本の証券会社でも、今後イーサリアムETFが取り扱われる可能性があります。
ETFのメリットは、証券口座で簡単に購入でき、暗号資産取引所の口座開設が不要な点です。一方、管理手数料がかかる点や、実際のイーサリアムを保有しないため、ステーキング報酬が得られない点がデメリットとなりますダイヤモンド14。
4. ドルコスト平均法
価格変動が大きい暗号資産に適した投資方法として、定期的に一定金額を積み立てる「ドルコスト平均法」があります:
- 定期的な購入: 毎月一定額(例:1万円)をイーサリアムに投資します。
- 積立サービスの利用: 多くの取引所では自動積立サービスを提供しており、設定すれば自動的に購入できます。
この方法のメリットは、市場のタイミングを計る必要がなく、長期的に平均購入価格を抑えられる点です。特に初心者や長期保有者におすすめの方法です。
セキュリティ対策
イーサリアムを含む暗号資産を安全に保管するためのセキュリティ対策は非常に重要です:
- ハードウェアウォレットの使用: 大量のイーサリアムを保有する場合は、Ledger NanoやTrezorなどのハードウェアウォレットの使用を検討しましょう。
- 2要素認証の有効化: 取引所のアカウントには必ず2要素認証を設定しましょう。
- 定期的なバックアップ: 秘密鍵やリカバリーフレーズは安全な場所に保管し、定期的にバックアップを取りましょう。
- フィッシング詐欺への注意: 偽のウェブサイトやメールに騙されないよう、常に正規のURLを確認しましょう。
まとめ
イーサリアム(ETH)は、単なる暗号資産を超えた革新的なブロックチェーンプラットフォームです。スマートコントラクト機能を実装することで、DeFi、NFT、DAOなど多様なアプリケーションの基盤となり、Web3時代のインフラストラクチャーとして発展してきました。
2013年に若き天才プログラマーのヴィタリック・ブテリンによって考案されたイーサリアムは、2022年のプルーフ・オブ・ステークへの移行や、2024年のETF承認など、重要なマイルストーンを達成しています。
価格予測については、1年後には3,000〜8,000ドル、3年後には5,000〜15,000ドル、5年後には8,000〜26,000ドル、10年後には20,000〜100,000ドルという幅広い予測がなされていますが、技術進化や規制状況、競合プロジェクトとの競争など様々な要因によって変動する可能性があります。
投資方法としては、取引所での直接購入、ステーキングによる運用、ETFへの投資、ドルコスト平均法による積立など様々な選択肢があります。いずれの方法を選ぶにしても、リスク管理とセキュリティ対策を十分に行い、長期的な視点で取り組むことが重要です。
イーサリアムは今後も進化を続け、ブロックチェーン技術の中心的存在として、デジタル経済のインフラを支えていくことでしょう。
参考資料:
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